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「学生支援緊急給付金」創設 労働学生の実態とは?20万円給付だけでは足りない?


2020年5月19日に、文部科学省は「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』制度を創設することを発表しました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響でアルバイト収入が減少した大学生や大学院生等約43万人を対象に、学生生活の継続助長として緊急に支援します。1人当たり最大で20万円が給付されます。

対象となる人や、手続き、支給期間はどのようになるのでしょうか?掘り下げていきたいと思います。

対象学生


支援の対象となるのは、大学、大学院、短期大学、高等専門学校の学生と、専門学校や日本語学校の生徒のうち、アルバイト代を学費などに充てていて新型コロナウイルスの影響で収入が大幅に減少し、勉学の継続が困難になっている人たちとなっています。 
すべての学生が対象というわけではありません。

文部科学省などの推計では、大学生(昼間部)約290万人のうち8割強がアルバイトに従事しています。
学生団体が4月に大学生や短大生ら1200人を対象に行った調査では、新型コロナウイルス感染拡大によって経済的に困窮し、退学を検討していると答えた学生は全体の20.3%にも上っています。

申請の手続き


給付金を申し込む人たちは、自分が通う大学などに申請し、そこで支給要件を満たしているか審査が行なわれたあと、認められれば、日本学生支援機構(JASSO)を通じて、給付されるということです。

文部科学省は、6月中旬頃から給付できるようにしたいとしています。

給付額


給付される金額は、新型コロナウイルス感染症拡大による休業の影響でアルバイトの収入が減った学生らに一律10万円、このうち、住民税非課税世帯の学生らには20万円が、それぞれ給付されます。


www.mext.go.jp


 

学生の労働実態


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学生のアルバイトはかつては「小遣い稼ぎ」や「レジャーや娯楽」のためという割合が多かったですが、現在では学生生活を送るためにアルバイトをしている学生が増えています。「生活費」「学費」のためにアルバイトしているのです。

国立大学の授業料は1990年の33万9600円から、現在は53万5800円までおよそ1.6倍上昇していますが、日本全体の所得は低下しており、学費を負担できない家庭が増えているのです。 

全国大学生活協同組合連合会による学生生活調査によると、下宿生の平均収入は12万9860円で増加傾向にあるといいます。
反面、仕送りは額は減少し続けています。

仕送りを10万円以上もらっている学生は1995年には62.4%でありましたが、2019年には27.9%まで減少しています。
逆に仕送り5万円未満(0円含む)の学生は1995年の7.3%から2019年には23.4%まで増加しています。

このように、下宿生の4分の1は、奨学金やアルバイトによって必要な収入を埋め合わせていると考えられます。仕送りを5万円もらっていたとしても8万円程度は、生活のためにアルバイトをして稼がないといけません。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、アルバイトをしている学生のうち、アルバイト収入の見通しは「大きく減少する」「減少する」の割合が7割にもなっています。

現在の学生のアルバイトは、生活維持のためにせざるを得ないケースが非常に多くなっていて、アルバイトなしでは退学もやむを得ないほど「生活の糧」となっています。

これまで月に8~10万円を稼いでいましたが、新型コロナの影響で給料が5万円まで減少してしまったので「家賃の支払いや生活費の捻出に困っている」といった声があるのが現実です。
こうした「自分の生活費を自分で稼いでいる学生たち」からすれば、10万円の給付は焼け石に水ともいえます。

「必要不可欠な労働力」として扱われるアルバイト学生

 

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アルバイトとして働く学生は、小売店や飲食店などで中心的な戦力とされるようになっています。
学生アルバイトの一部は、企業から重い責任を負わされることも少なからずあり、学生であるにもかかわらず、通常とほとんど変わらない時給で労務管理を担うこともあります。欠員が出れば学校の授業を欠席して穴埋めをすることも。

アルバイト収入が「生活の糧」となり、企業からも「必要な労働力」とみなされている学生が多いにもかかわらず、その扱いは最低賃金水準の時給で働かされ、有給休暇など法律上の権利が無視されているケースが非常に多いのです。雇用保険制度の対象からも外されています。

コロナ禍中で学生が生活困窮に陥る要因として、「労働者」のように働いているにもかかわらず、労働者としての権利を行使できないという矛盾の中に置かれているからと考えられます。

実質的に「労働者」なのに雇用保険が適用されないのであれば、10万円や20万円の給付では足りないという声にも納得できます。

 

mumiyan.hatenablog.com

 

終わりに

 

小売・飲食・塾などの業種は学生アルバイトが多く、生活困窮状態に陥っています。
政府は事業主から休業手当を受け取れなかった労働者に対して直接給付金を支給する制度を新たに創設することを表明しています。

新制度は、雇用保険とは別の制度になるようなので、雇用保険に加入していない学生アルバイトなども対象になる可能性が高いです。

生活のために働いているという観点から考えると、政府は学生アルバイトも「労働者」として扱うことも視野に入れるべきではないかと考えます。